人工衛星(じんこうえいせい、Artificial Satellite)
人工衛星は通常地球を周回する軌道にあるものが大部分であるが、惑星探査目的で火星や土星などの他の惑星を回る軌道上に宇宙探査機が到達しており、各惑星の人工衛星となっている。これらは惑星の観測を行ったり、火星探査機などのように他惑星の表面に着陸した宇宙探査機からの各種観測データを地球まで中継送信している。
人工衛星の原理的な構想は19世紀後半、ロシアのツィオルコフスキーがロケットを使用して宇宙船を打ち上げるという構想を発表したことに始まる。1950年代に入ると、米ソは競って人工衛星打上げを目指し宇宙開発競争が始まったが、1957年10月4日、ソ連が世界初の人工衛星スプートニク1号を軌道に乗せることに成功した。1960年代に入ると直ちに人工衛星の実用的利用も模索され始めた。アメリカは1960年に、初の気象衛星「タイロス1号」、航法衛星「トランシット1B」、偵察衛星「ミダス2号」を相次いで打ち上げた。
その後の宇宙開発の中心は、有人宇宙飛行に移るが、人工衛星の実用も次第に本格化し、1962年には、初の商業用通信衛星である「テルスター1号」が打ち上げられ、テレビ中継にも成功して、宇宙開発が市民生活と密着していくようになる。1964年に、初の静止衛星「シンコム3号」が打ち上げられ、日本でも1970年、日本初の人工衛星「おおすみ」が東京大学宇宙航空研究所の手で打ち上げられた。
1970年代に入ると米ソは大型有人宇宙船であるサリュート、スカイラブを打ち上げ、諸外国を大きくリードしていったが、人工衛星利用に関しては実用面、とりわけ経済的な意味からの再評価が行われ、しだいに実社会の要請に呼応するようになった。21世紀現在、気象衛星や通信衛星など、人工衛星は最早社会には欠かせない存在となった。また軍事衛星も国家戦略的観点からすると重要度が高く、欠かせないものとなっている。
人工衛星は高高度を飛行するために、非常に広い地域を可視域とすることができる。このことが今日、人工衛星が広く利用されている最大の理由で、開発初期から通信・気象・偵察衛星が生まれたのもこのためである。近年ではこれらのほかに測地衛星、資源探査衛星など多種多様の実用衛星が登場している。通常、通信・気象衛星は静止軌道上に置かれるが、他の衛星は比較的低高度の軌道に置かれる。
地表面観測、探査技術は最近急速に進歩しており、リモートセンシング技術を用いた埋蔵資源、土地利用、環境汚染、魚場調査などの広範な応用が現実のものとなっている。スペースシャトルが実用化された現在では、大型の宇宙実験室が実現しつつあり、これを用いた宇宙工場の調査も活発で、無重量状態、真空状態などの宇宙空間の産業的地盤としての有効性も模索されている。
宇宙開発も約半世紀を経て、人工衛星の数は急増しており、衛星どうしの衝突の可能性も問題となりつつある。また大型人工衛星や原子力衛星の落下(コスモス954号)もすでに社会問題となっており、国際的な対策が不可欠である。また宇宙空間の軍事利用化も進行しつつあり、科学技術の面以外にも、政治・外交など広い面での国際協調も必要となってきている。
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